徒然日記

ふと感じた四季折々のこと、本のこと、街のこと

舞台『みみばしる』

今更ながら…

先月、ラジオをテーマにした舞台『みみばしる』を下北沢本多劇場で観てきた。

 ラジオ、J-WAVE、リスナー、キャスト…の「愛」が溢れる舞台で、素晴らしかった。

舞台で演劇を観ること自体が2年ぶりで、役者の汗や息遣い、振る舞う振動を生で感じられるところが魅力でしょう。ドラマや映画と違って迫力あって、刺激を受けた2時間だった。

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「あー、わかるわかる」の共感ポイントがたくさん散らばっていて…。やっぱりラジオっていいなぁ、と思えた瞬間がたくさん。

目と耳が忙しくて充実した内容でした。

この舞台役者さんはみなオーディションで、役者経験ない素人の子も参加しているんだけど、舞台上では新人なの?って感じで役者魂ある演技でした。

ラジオ局JWAVEが主催しているだので、会場内では、館内アナウンスブースがあって始まる前から面白い仕掛けも。

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結局、千秋楽公演@大阪でも観れた大満足。役者さんたちの最後の涙に、私もホロリと。

 

「人生なんてぜんぶかんちがいだ」っていうね、セリフものすごくよかった。

舞台もラジオもいいね。f:id:chihalun_lun:20190404081326j:image

 

【映画】ROMA

Netflixでも配信されている映画『ROMA』。

デモや暴動があった波乱の1970年代初頭のメキシコを舞台に、家政婦クレオの視点で淡々と日常生活が進む。

 

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外廊下を掃除しているだけのオープニングシーン、床タイルに清掃の水を流しているんだけど、そこに映る空と飛行機、モノクロなのに綺麗。

アカデミー賞に入った理由も納得できる。トランプの国境の壁問題で、おそらくメキシコ人は何か感じているのかなと思ったり。

 

クレオと雇い主である家族の愛や絆が、至難を乗り越えて強くなる。いつの時代も女性は凛々しく強い。メキシコの歴史なんて全く知らないから、歴史の一部を知れた感覚で面白い。

【映画】運び屋

家庭を顧みず、自由に生きてきた主人公アールに残された人生の残りと後悔した時間を取り戻すべく、麻薬運びという犯罪に加担していく。犯罪映画でありながら、人生で失ってはいけないもの がテーマとして語られていた。地位やお金、名声より大切なものがある。娘役に実の娘を起用しているところも、イーストウッド自身に重ねているのだろうと思えた。

「何でも買えるのに、時間だけは変えなかった」というアールの言葉には、家族と過ごす時間を疎かにしてきた後悔の念がひしひしと感じられた。
家族や友人という自分の周りにいる大切な人には愛を持って接しよう。
人生は挫折しても何度でもやり直せるというけれども、失ってからでは取り返せない大切なものがあるから、素直に誠実に生きていきたい。
「ただいま」と迎えてくれるあたたかい場所があるのは、幸福なことだとアールの一人の生活をみていて寂しくなってしまった。

スマートフォンや携帯というデバイスを持たずに生きてきたアールと、スマートフォンに依存する若者たち。
アールが「スマートフォンに頼りすぎだ」みたいなことを言っていて、まさにそう。
もうスマートフォンを持たない時間作るなんてできない。
ネットがなければアールのように愉快に能天気に自由に生きられるんだろうなと思えた。
映画が終わってすぐにiphoneを開いた自分が腹立たしくなった。

クリント・イーストウッドの作品には、何かしらメッセージがあり、今回感じたことは、
孤独の辛さと人生で失ってはならないもの。

にしても、イーストウッド88歳には見えない。彼が出演、撮影する作品はあと何本観られるのやら。

【映画】家族のレシピ

日本とシンガポールの外交関係樹立50周年として企画された映画だと、キネマ旬報斎藤工と監督のインタビュー記事に記載されていた。
シンガポールと高崎を舞台に、家族3世帯を描いている。シンガポールの料理が出てきて、スパイスやスープの香りが漂ってきて、味わい深い。観終わった後は、バクテーというシンガポールの国民的料理が無性に食べたくなったし、バクテーの背景にある歴史や料理法にも関心が持てた。

高崎でラーメン屋を営む真人の父が急死し、遺品の中から一冊の日記帳を見つける。それはもう亡き母が書いたもの。母の若き頃の記憶と足跡を辿るべく、シンガポールへ。日本人の父との結婚を許されず、家族と断絶していた母の過去を知る。

第二次世界大戦の頃、日本軍がシンガポールを統治していたことを知らなかった。このことを知っている日本人は多いのだろうか。でもシンガポール人は統治されていたことを史学として学んでいて、悲惨な過去を知りながらも、旅行やビジネスでやってくる日本人を快く受け入れてくれる。シンガポールの歴史自体はそんなに深くないが、どんな背景でなりたったのか、何があったのかは知っておくべきだと思う。「日本軍は赤ん坊を放り投げ、刀剣で刺し殺した」といった話から、日本の教科書には書かれていないことを知る。日本人が過去にシンガポール人に対して、悲惨なことをしてきた事実をしっている祖母が、日本人との結婚を反対する理由もものすごく理解できる。祖母の偏見を払拭させたのが、バクテーだった。祖母の手料理に涙する真人に、もらい泣きをしてしまった。次の世代に引き継がれる手料理は、心と絆を繋ぎ、昔の記憶を思い出させてくれる
真人と同じ経験はないが、私は母の実家に行くと、祖母がよく「鶏のスープ」を作ってくれる。
母の大好物であり、必ず準備していてくれる。母が作ってくれた記憶はないのだが、祖母はいつも「母が好きな食べ物」と言いつつ、母の過去のことを話してくれたりするのである。食事をすることで、祖母が覚えている記憶を話してくれるので、なんだか私まで懐かしい気持ちになるのである。


ふと、『blank13』のときのような人の懐の部分を描いているから、じわじわとくる感覚がある。blank13では亡き父の記憶を探り、家族のレシピでは幼き頃の記憶を辿る。
どちらも家族が共通していて、両親に対して自分はちゃんと接してられるのだろうか…とふと家族に会いたくなった。
家族でわいわい楽しく外食している記憶を思いだす。
心とお腹を満たしてくれる作品でもあり、家族というあり方を再度考えさせてくれる内容だった。
お袋の味は、その人以外ではなかなか再現ができないものなので、手料理の味は忘れないでおきたいし、自分も作れるようにするためにも
実家に帰省したら作り方を教えてもらおうと思う。

【映画】ねことじいちゃん

過疎化が進む離島、穏やかな時間が流れ、お年寄りたちがお互いに声をかけあい、寄り添い、助け合いながら生活している姿に、微笑ましくあり羨ましかった。私も後50年後くらいはこんな場所で好きな人と(お互生きていたら)地域の人と手を取り合いながら、丁寧な暮らしをしたいものだ。

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動物写真家の岩合光昭さんの初監督作品、春夏秋冬の折々のシーンに猫が必ず出てくる。あぁ、猫も可愛いなぁと素直に思えた。動物は人の心を優しくしてくれる生き物だ。

 


主人公の大吉さんの島暮らしを見て、自分の老後はどうしようなんてちらついたが、頭の中にふと親の今後のことを考えてしまった。大吉さんの息子が母の三回忌に訪ねてきて、「一緒に暮らそうよ。東京でも猫は飼える」の言葉がリアルすぎて、安心を感じつつも寂しさを覚えた。島と猫とそこにいる人々も、大吉さんにとっては家族そのもの。島で過ごす時間がゆっくりで、みんな心があたたかく、助け合う優しさは、都会では味わえないものだと。

 


島の人々の恋模様にもほっこりする。高齢者同士の恋、1年後は離れ離れになる高校生の淡い恋、一目惚れから始まる恋…。微笑ましい限り。

 


そして、猫に癒されるだけじゃない。お腹を空かせてくれる映画でもある。大吉さんの亡き奥さんが残したレシピノートが、イラスト付きで素敵だった。豆ご飯、ちらし寿司、いなり寿司、きのこご飯、カルパッチョ、卵焼き、味噌汁…とても美味しそう。

 

 

 

とくに、土鍋で丁寧に炊きあげた豆ご飯。鍋を取ると、ホカホカ焼きたての白いご飯と緑の豆たちのバランスが綺麗で、スクリーンから香り漂ってくるよう。豆ご飯はあまり好きじゃないんだけど、一度自分で炊いてみようと思う。

書きかけのレシピノートも、人に教わったレシピでびっしりと埋まっていて、薄いノートだけど、島の人の思いや優しさがぎゅっと詰まっていると思うと、これもグッとくる。

 


助け合って生きる。素晴らしい。私も歳を取っても自立してちゃんと自炊して健康でいたい。猫と生きる生活も良さそう。

【映画】女王陛下のお気に入り

不穏な音楽と独特な緊張感とサラとアビゲイルの地位争いに、どっと疲れてしまったが、見応えがある映画だ。深いで不安で少し不気味な映像で、エンディングロールに入るまで私の心臓の音はトクトクと鳴り響いていたくらい、ドキドキだった。宮廷内も魅力的でいつの間にか18世紀の世界に引き込まれていた。

 

アンが当時どれだけすごい女性だったのかはわからないけど、女王様って案外孤独なんだと思った。どの時代であっても、女性同士の争いは怖いものだ。表面ではいい顔をしていても、裏では何を考えているのか、どんな行動をしでかすかわからない。妬み、嫉み、恨みと女性が抱く感情と表情がリアルでスリリング。エマ・ストーンが演じたアビゲイルという小悪魔的存在の女性が、上手いこといろんなものを掴んでしまうんだろうな。世渡り上手というのがずる賢いというのか。素は気を抜かすとバレてしまうんだろうけど。

 

観ていて感じたことは、好きな人のそばにいるより、好かれる人のそばにいる方が落ち着くことはある、ということ。

【映画】グリーンブック

 


人種差別がテーマであるのに、観終わった後はすっきり。心が浄化された感じになるのは、学があって洗練されたドクターとガサツで教養が欠けてるトニーという、見た目も性格も真逆の2人の程よい距離感と友情が見られたからだ。正反対の二人が、旅を通じて心を通わせていく姿に心が温かくなる。

黒人差別や偏見の凄まじさも描いているけど、悔しさや腹立たしさは全くない!

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時代は1962年、イタリア系のトニーは家族を養なっていくために高給な仕事の依頼の面接を受けると、黒人ピアニストのツアー運転手と召使いの内容。初めは断ったものの結局引き受け、黒人専用ガイドブック"グリーンブック "を持って、ツアーへ。

 


黒人と共に行動するからこそ見えてくる、差別や偏見、当時のアメリカの複雑な社会というのがよくわかる。そしてこの物語は実話、よくできていて、出会うべくして出会った2人。

ドクターに対しての対応に、理不尽さに気づき少しずつ変化していくトニー。

当時の黒人差別に対する辛さなんて、自分ごとのように体験しないとわからないもんだなと思った。

 


誰かが動かないと、世の中のルールは変わらないものだ。トニーとドクターの勇気ある行動に、変わるチャンスはいつでもあると気づかされる。

「勇気は人の心を変える」はグッとくる。

 


お金のために運転手として始めたトニーがいつしか、自分にしかできない仕事をしているところも素敵だと感じた。

ほんとう、2人は心がいい奴!

 


黒人ピアニストというと、1930年代から活躍していたナットキングコール。ショーの時間になるとステージに立ち、食事は黒人専用のレストランで食事をしていたんだろう。ゲストなのにレストランで食べられないルールがある、黒人だから、と。そんな彼も人種差別が激しい時代で闘い続けたのだろう。

 


最後に、こんなにケンタッキーフライドチキンを食べたくなる映画でもある。音楽と食べ物と旅は全世界共通のエンターテイメントだ!