徒然日記

映画や小説の感想を紹介しながら、旅先や街歩きの情報も掲載。

【映画】家族のレシピ

日本とシンガポールの外交関係樹立50周年として企画された映画だと、キネマ旬報斎藤工と監督のインタビュー記事に記載されていた。
シンガポールと高崎を舞台に、家族3世帯を描いている。シンガポールの料理が出てきて、スパイスやスープの香りが漂ってきて、味わい深い。観終わった後は、バクテーというシンガポールの国民的料理が無性に食べたくなったし、バクテーの背景にある歴史や料理法にも関心が持てた。

高崎でラーメン屋を営む真人の父が急死し、遺品の中から一冊の日記帳を見つける。それはもう亡き母が書いたもの。母の若き頃の記憶と足跡を辿るべく、シンガポールへ。日本人の父との結婚を許されず、家族と断絶していた母の過去を知る。

第二次世界大戦の頃、日本軍がシンガポールを統治していたことを知らなかった。このことを知っている日本人は多いのだろうか。でもシンガポール人は統治されていたことを史学として学んでいて、悲惨な過去を知りながらも、旅行やビジネスでやってくる日本人を快く受け入れてくれる。シンガポールの歴史自体はそんなに深くないが、どんな背景でなりたったのか、何があったのかは知っておくべきだと思う。「日本軍は赤ん坊を放り投げ、刀剣で刺し殺した」といった話から、日本の教科書には書かれていないことを知る。日本人が過去にシンガポール人に対して、悲惨なことをしてきた事実をしっている祖母が、日本人との結婚を反対する理由もものすごく理解できる。祖母の偏見を払拭させたのが、バクテーだった。祖母の手料理に涙する真人に、もらい泣きをしてしまった。次の世代に引き継がれる手料理は、心と絆を繋ぎ、昔の記憶を思い出させてくれる
真人と同じ経験はないが、私は母の実家に行くと、祖母がよく「鶏のスープ」を作ってくれる。
母の大好物であり、必ず準備していてくれる。母が作ってくれた記憶はないのだが、祖母はいつも「母が好きな食べ物」と言いつつ、母の過去のことを話してくれたりするのである。食事をすることで、祖母が覚えている記憶を話してくれるので、なんだか私まで懐かしい気持ちになるのである。


ふと、『blank13』のときのような人の懐の部分を描いているから、じわじわとくる感覚がある。blank13では亡き父の記憶を探り、家族のレシピでは幼き頃の記憶を辿る。
どちらも家族が共通していて、両親に対して自分はちゃんと接してられるのだろうか…とふと家族に会いたくなった。
家族でわいわい楽しく外食している記憶を思いだす。
心とお腹を満たしてくれる作品でもあり、家族というあり方を再度考えさせてくれる内容だった。
お袋の味は、その人以外ではなかなか再現ができないものなので、手料理の味は忘れないでおきたいし、自分も作れるようにするためにも
実家に帰省したら作り方を教えてもらおうと思う。