徒然日記

ふと感じた四季折々のこと、本のこと、街のこと

【映画】七つの会議

池井戸潤作品! いや〜面白い! 真実を探ろうとすると人が異動し、新たな謎発覚し、真実が明かされていく爽快感と伏線の回収が見事で、気持ちが良かった。大手・中堅企業というと、安定して一定の給料がもらえる安心さと安定があるように見えるが、求められるもの、背負っている企業の名が大きく、上からの期待と数値に答えていかないといけない恐ろしさを、中堅メーカーの営業課で働く社員たちを見て思う。

 

毎日数値に追われノルマを達成するためのプレッシャーに苦しみ、ピリつく空気……営業の大変さを友人から聞いてはいたが、映像に臨場感がありすぎて、まるで同じ一員のように怒られているような恐ろしさ、胸が締め付けられる。「こんな会社では働けない、営業なんて絶対にしたくない」そう心の仲で思ってしまった。自分の甘さを実感する。汗水たらし、暑いときも寒いときも外回りして、物を売り、売上を出し続ける営業マンがいるから、世の中が回っていると思うと、営業マンってすごい……。サラリーマンの苦悩がよく描かれている。

 

解き明かされていく中堅メーカーの不作為。真実というのは、テレビやネットで公開された情報が正しいとは限らない。多くの企業と人が絡むほど、売上を伸ばしていきたいという欲から利益を追求し始める。朝から晩まで働くサイクルに陥り、何が”正しい”のかという判断ができなくなり、自分の意志では動けずに、上から言われたことに従い、不正だとわかりつつも利益のためだ、上に言われたからだと手を出してしまう。日本の働きすぎ文化が亡くならない限りは、隠蔽や改ざんデータと不作為な行為はなくならない気がする。自分が知らないだけで、どの会社にもこういった問題は存在するんだろう。

 

会社員である人には共感できる話だし、これから社会にでる学生にとっては、社会の仕組みや働く意味について考えさせられるであろう。「仕事とは何か」という部分では、6年間伝票処理をしていた女性社員、寿退社前に会社にいた意味を残すために、ドーナツ無人販売店企画を提案する。直接利益にはつながってはいないが、アイデアを形にして提案することが素晴らしい。私が今の会社で残せていけること、私がいた意味を常に考えながら仕事をしたい。

 

最後に、野村萬斎さん、香川照之さんなど豪華俳優さんたちの演技があって、この作品が完成する。緊張感を漂わす頬の動きや眼力、苦労してはプレッシャーに耐えうるサラリーマンを演じきっていた。野村さんの狂言っぷりから正義を語るヒーロー的役柄、圧倒的な演技がキラリと光る。

 

小さなごまかしが連鎖し、ことが大きくなっていく。何が正しいのか判断できなくなったら社会人としては終わりだと思う。下は上を見て学び、それを下に教える。自分の言動や行為も日頃から気をつけておきたいものだ。見応えある映画だった。

 

 

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