徒然日記

ふと感じた四季折々のこと、本のこと、街のこと

【映画】ライ麦畑で出会ったら

青春ロードムービー、ロマンチックな映画だった。
忘れていた淡い思い出でが、ふわっと蘇り心があたたまる。

”学生生活に戻りたい”そう思わせてくれる映画はたくさんあるが、
”学生生活に魂を揺さぶられるくらいに何かに出会いたかった”と思わせてくれたのは
この作品がはじめて。

主人公ジェイミーのように将来の仕事に繋がることを、自らの意思で挑戦、”冒険”する姿にやきもちをやいてしまうほどだった。
恋や考え方に不器用ながらも真っ直ぐなジェイミーに,母性本能をくすぐられるというか。
誰もが抱えたことがあるであろう、孤独、後悔、葛藤、希望、いろんな感情があって、自分と重なる部分があったりしなくもなかった。


1960年代のアメリカ・ペンシルベニア州、学生生活に馴染めず友達にも馬鹿にされながら孤独な生活を送っている高校生のジェイミーは、J.D.サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」の小説に感化され、舞台化を思いつく。舞台化の許可を得るために、サリンジャーに連絡を取ろうとするが、なかなか居場所をつかめない。演劇サークルの女子高生ディーディーと一緒にサリンジャー探しの旅に出かける。

不条理に満ちた学生生活でに飲み込まれないと孤独、葛藤、後悔、不安に苛まれる思春期。
ディーディーに支えられながら、サリンジャーを見つける旅で、ジェイミーが少しづつおとなになっていく変化は、甘酸っぱさやほろ苦さがあり、感情的な部分ではリアルそのもの。
サリンジャーの作品を舞台化にすることで、”自分を変えられる”、”未来を切り拓ける”という希望や期待している部分では、ジェイミーのように学生生活になじめず葛藤していた人にとっては、共感できるのではないかと思ってしまった。学生時代に悔しい思いや自分ではどうしようもできない境遇に遭ったり、存在感を出せなかったり、バカにされたり、周囲の圧で変えられなかったり……思春期のそういった感情は忘れた方が楽しく生きていけるしストレスにもならないだろう。でもこの感情を忘れず心の奥底に眠らせておくことで、あの頃の気持ちを思い出し、自分を奮いたたせる糧になるんじゃないか。

思春期の頃にとてつもない経験や悔しい思いをした人は、大人になってからも”強い”、”現状に満足せず常に挑戦し続ける人”なのではなかと思っている。
あとはジェイミーのように学生生活で何か”冒険”を成し遂げた人は、その後の人生においても自信になるだろうと思う。

映像が綺麗で、麦が揺れている景色や車が道路を通ると、落ち葉がふわっと散らばる感じが秋らしくて、このシーズンにピッタリの作品。純粋に美しかった。
原作『ライ麦畑でつかまえて』を読んでいなくても楽しめる。読んでいたらオマージュもあり、より楽しめると思う。

人はいつか大人になるんだから、10代の学生だからこそできることをやっておくべき意味を実感した。
10代”魂を揺さぶられるくらい”の何かに出会ったか。
出会い、好きになり、とことん打ち込む。15〜18歳の頃にそんな出来事はあったのか?と振り返る。
10代に打ち込んだことが、20代30代40代と繋がってくるから、
知らないことに興味を持ち、見つけ、結果を残す。
お金を生み出せとか、ジェイミーのように作者を見つけるために泊りがけて見つけに行くといった、大きな事ではなく、
日々の日記を付ける、映画の感想を書く、コレクションをする、
そんなことでも、10代に残したものはゆくゆく価値になるんだろう。

ジェイミーを見て、初心に振り返え、また頑張らなきゃという思いを奮い立たせてくれる。今の私にぴったりで、小さな旅をしている気分になれる映画だった。
また『ライ麦畑でつかまえて』は読み直そう。