徒然日記

映画や小説の感想を紹介しながら、旅先や街歩きの情報も掲載。

【映画】万引き家族

是枝監督が表現する家族のかたちを描いた作品。
見終わった後にじんわりとくる余韻に、家族とは何かを改めて考えさせてくれる。

万引きをしながら、5人の家族は小さな一軒家に住んでいる。スーパーで万引きをして商店街のコロッケを買って食べながら家に変える途中で、マンションでポツンと座っている少女(ゆり)を見つける。「コロッケたべる?」と声をかけて、家に連れて行くことに。
この少女の身体には傷があり、親から虐待を受けていた。虐待といえば、タイムリーに先日虐待死の事件の話があっったから、話にリアリティがって、ドキュメンタリー映画を観ているような感覚だった。

同じ屋根の下で同じ釜の飯をたべ、お互いに身を寄り添う時間と思い合う時間が、
家族というものを作っていくんだと思う。
かわいい、愛おしいと思えるかが大事だと、安藤サクラがゆりをギュッと抱きしめるシーンでは、涙が出るくらい血がつながっていなくても、素晴らしいなと思えた。

一緒に行動していう中で、ゆりはしょうたのことを”お兄ちゃん”と呼ぶように。子供は親の背中をみて育つというが、兄弟姉妹もそうで、ゆりもしょうたことをずっとみていて、万引きをするように。
子供が店員や監視カメラを察知しながら、父親とサイン出し合って連携して、万引きするのはすごいよ、プロだよプロ。

そしてストーリーをぐっと魅了しているのが、個性あふれる役者さんたち。
リリー・フランキー安藤サクラ樹木希林松岡茉優
ちょっと頼りない父親役がピタッとハマるリリーさん。だらしなくて悪いことをしているんだけど、憎めない。
今年公開したblank13でも、疾走した父親役を演じていた。
是枝監督でいえば、リアリティを出すために子役には脚本を渡さないのだが、はじめリリーさんに「台本入りますか?」と聞いていたそうだ笑(J-WAVEのラジオにて)。
子役たちには脚本がなく、表情といいセリフといい、子どもだったらこんな反応するよなぁと思えるくらいの演技だ。

この家族にいろいろあって寂しさを感じるところがあるんだけど、離れてしまっても、ボロくて狭い一軒家で過ごした光景や家族のあたたかさは、それぞれ心の中に残っている、成長してもその思い出は残っていくんだろうなと、最後の最後で感じさせてくれる。

2時間の尺の中で、1年の月日のながれ、四季を感じることができる。冬から始まり徐々に夏に向かっていく。
海以外のシーンは、全部冬に撮影したそうだ。
そうめん、花火の音、ラムネのビー玉、波の音、焼きとうもろこし、縁側で飲むビールなど、風情も楽しませてくれる。
本当にいい映画だった。